2014年5月11日日曜日

シシリーのDVD「言葉が優勢でないところでは、暴力が蔓延る」

刑務所にボイスワークをしに行ったことで有名なのは、
ジュデイ・ディンチにボイスを教えたことで一躍有名人になった
パッツィ・ローデンバーグだが、
長年、ロイヤルシェークスピアカンパニーでボイスコ-チを
していたシシリー・ベリーのDVDを見ていたら、
彼女も刑務所で受刑者とシェークスピアのテキストワークをして
いたらしい...そうだったのかぁ。


またDVDには、彼女がブラジルのファベーラの劇団を訪れて、
ティーンズに演劇を教えているシーンがあった。
昨年、私が念願のシシリーの講座を受けた時も
毎月一度ブラジルに教えに行っていると言っていた。
もしかしたら、その活動をずっと続けているのかもしれない。


リオ・ディジャネイロのファベーラにあるその劇団は、
見上げるような坂道を上っていったところにあって...
しかし、子どもたちは素直でエネルギーがあって、とても
楽しそうにボイスワークをしていた。


あるシーンが印象に残った。一人の女の子がセリフをいう。
(ポルトガル語でのセリフだった)
まわりの人は素通りしていく、誰も自分の言っている事を聞いてくれない。
腕をとっても振り払われる、誰もが近寄ると逃げていく...
するとその女の子は、呼吸が早くなり、ピッチが高くなり、
やがて、その場に立ちすくんで泣きながらセリフを言った。
誰もが引き込まれた、迫真のシーンだった。彼女は、
あまりにもこの状況が、日常そのままだったからだという。
DVDでもそのリアリティは十分に伝わってきた。
そして、本当に厳しい現実の中で暮らしている彼らの生活を
垣間見た気がした。


ところでつくづく、
こんな感情の変化を舞台で演じられる俳優さんは本当に凄いと思う。
段々に変化していくセリフのテンポ、呼吸、音域など、他者の
反応ーこの場合、無視、無関心ということだが、を自分にいれながら、
変わっていった彼女の「本当」を「演技ー技術」でつくるという訳だから...
俳優という職業は、本当に凄い!