2015年3月14日土曜日

知名

他のひとがやってきて
この小包の紐 どうしたら
ほどけるかしらと言う

他のひとがやってきては
こんがらがった糸の束
なんとかしてよ と言う
......

ある日 卒然と悟らされる
もしかしたら たぶんそう
沢山のやさしい手が添えられたのだ

一人で処理してきたと思っている
わたくしの幾つかの結節点にも
今日までそれと気づかせぬほどのさりげなさで

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おんなのことばに収録されている詩「知名」です。
茨木のり子さんが、50歳の時のこの詩を
私は、少しコミカルに読んでみました。
前年、ご主人が亡くなっています。

本来なら、
シリアスなトーンで読むのがよいだろうと思ったのですが、
いつも行の最初の音が印象的に強くて、こういう場合は
文の初め=頭を立てた方がよい感じでした。
すると、おのずとテンポは快活になり、
加えて、隣同志に並ぶ音が、すんなに後ろから前に出る訳でない
前や後ろをせわしなく行き来するので、
それをメリハリに使うと、
軽さが出て、結果、コミカルな読み方になっていった…という訳です。

姉御肌できっぱりとした性格の茨木のり子さん、
紡がれた言葉の音の数珠とこの詩ができた心境はいかばかりか…

きっとこの詩のできた日は、透けるような遠い青い空だった
快晴の日だったんじゃないかな、と思いました。

3月21日ポエトリーリサイタルがあります。
14:00-15:00 ぜひお越しください。
tamaproject015@yahoo.co.jp

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こちらでいろいろな情報をご覧になれます。
このHPは、5月までです。